副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
その日の夜遅く、仕事上がりだという啓太さんから、電話がかかってきた。

「もしもし」

「美鈴、もう寝るところだった?」

「いえ。本を読んでました」

「邪魔しちゃったかな?」

「大丈夫ですよ」

「ならよかった。ああ。一日の終わりに、こうやって美鈴の声を聞けると、癒されるよ」

「そ、そんなこと……
あっ、そうだ。啓太さん、報告が遅くなってすみませんが、昨夜、ドレスを受け取りました。ありがとうございました」

「ああ。水曜日のパーティーで、美鈴がどのドレスを着るのか、楽しみにしてるよ」

そんなふうに言われると、なんだか気恥ずかしくなってくる。

「パーティーで会えるのが、待ち遠しいよ」

まるで、本心で言われているような気になってしまう。

でも……
そうか。
啓太さんは、周りに疑われないような、本物感を出そうとしているのかもしれない。

「私も、会えることを楽しみにしています」

啓太さんの期待に応えられるように、勇気を出して同じように返した。

「おやすみ、美鈴」

「おやすみなさい」


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