副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
水曜日の定時前。
篠原さんとパーティーに出席する準備のため、先日購入したドレスを持って、美容室を訪れていた。

「いらっしゃいませ、佐山様。
本日は、ダークグレーのドレスなんですね。ラメが入っていて、大人っぽいですね」

先日もお世話になった、女性店員さんに迎えられた。

「このネックレスもつけたいんですけど……」

啓太さんからいただいた、ガーネットのネックレスを見せた。

「まあ、とっても綺麗ですね。ドレスにもぴったりです。わかりました。仕事ベースでかつ、大人のセクシーさも出るような雰囲気にしてみましょう」

セ、セクシーさはいらないかも……
と思いつつ、じゃあ何がいいのか聞かれてもわからないので、お任せすることにした。

「よ、よろしくお願いします」



お任せすること数十分。
見違えるように作り替えられた自分がいた。

「佐山さん、普段はあまりメイクをされないですか?」

「はい。おしゃれはよくわからなくて。いつもファンデーションと口紅をつけるぐらいしかしないです」

「もったいないですよ。すごくお綺麗なんですから、おしゃれを楽しまないと」

「綺麗だなんて、そんなことないですよ」

謙遜する私に、美容師さんは首を振る。

「よかったら、メイクの仕方とかお教えしますよ。気が向いたらぜひ、きてくださいね」

「あ、ありがとうございます」
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