副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
〝僕が付き合わせてる〟と言って、啓太さんはデートにかかる費用を、全て払ってくれると言う。
確かに、私の給料で全て付き合うのは難しい。
それでも、さすがに服までとなると、違う気がする。

「でも……」

「僕は衣類を取り扱う仕事をしてるんだ。いろいろなブランドやショップの動向も気になるんだよ。
でも、男一人で見に行くのは、ちょっと勇気がいるだろ。だから、美鈴の服を選びに行くのは、偵察にもなって助かるから。一緒に買いに行かせて」

その言い方はずるい。
私が遠慮しないように、そして断り辛いようにしてしまう。

「わかりました。今回だけは、お言葉にあまえます」

「じゃあ、15時頃に迎えに行くよ。当初の予定より、長く美鈴といられると思うと、嬉しいよ」

「なっ……そんなあまいこと、言わないでください。恥ずかしいです」

「僕達はどこから見ても、恋人でいなきゃいけないからね。慣れてよ」

「うっ……」

「あはは。じゃあ、また明日も連絡するよ。おやすみ、美鈴」

「おやすみなさい」

啓太さんってなんか……すごくあまい人だ。
仕事中の姿勢からは、こんなあまい姿は想像できなかった。

だめだ……
なんだか、日に日に、啓太さんのことを考える時間が増えている。
そのことを、なせが怖く感じてしまった。

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