副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
まあ、そもそも片や大企業の副社長を務めていて、いずれ社長となる人。
そして、私はというと……一般人。
後ろ盾も何もないどころか、家族は母だけで、特筆できるものなんて、何一つ持ってない。
片親であることは、もちろん何一つ恥じてないし、むしろなくなった父のことも、女手一つで私を育ててくれた母のことも、誇りに思っているんだけど。
とにかく、私が啓太さんと対等になれるはずなんて、そもそもないんだ。

「美鈴、何を考えてるの?」

「えっ?あ、いや……」

「僕とデートしてるのに、他のことを考えるなんて、妬けるな」

「そ、そんな妬けるだなんて……タクシーの中でまで、演技しなくてもいいですよ」

思わずそう返すと、啓太さんは少しだけ視線を落とした。


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