副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
タクシーで30分ほど移動し、連れて来られたのは、私は絶対に来ないような、高級店の並ぶ一画だった。

「啓太さん、この辺りのお店は高級すぎです。とても私には着られません」

「何言ってるの。美鈴なら、どんな服も着こなせるから大丈夫。それに、僕が見立てるんだから、間違いないよ」

「で、でも……」

「今後、うちの会社で、こういう高級ブランドの取り扱いを増やす検討をしてるんだ。その下見もできて、ちょうどいいんだよ」

やっぱり啓太さんは、こういう場面で私が断れないように、うまく言いくるめてしまう。

「わかりました」

「よかった。じゃあ、見たいお店は数店決めてるから。行くよ」

そう言うと、啓太さんは私の手を引いて歩き出した。
突然のことに、驚いてしまう。
でも、啓太さんの手はあまりにも心地良くて、拒むことができなかった。

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