副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
最初に入ったお店は、一言で言うと〝かわいらしい〟雰囲気だった。

「美鈴は、どういう服が好きなの?」

不意に尋ねられて、返答に困ってしまった。

「好きな服……ですか?えっと……」

「困らせちゃったかな?じゃあ、今日着ている、このネイビーのワンピースは、美鈴が選んだの?」

「これですか?これは、私が選びました。着心地が良さそうで選んだんです。でも、色が決められなくて……店員さんに相談して決めました」

「美鈴は、何色が好きなの?」

「えっと……すみません。私、自分の好みが明確に描けなくて。好みや希望を聞かれると、どうしてもうまく答えられなくて」

「ドレスの時もそうだったね。どうしてだろう?今日は僕がプレゼントするんだから、安心して希望を言っていいのに。遠慮しないで。まあ、見立てるのは僕だけどね」

「遠慮というか……私、欲がないんでしょうね」

「そうかなあ。僕の見かけたみいちゃんは、母親におねだりする、かわいい女の子だったけど」

啓太さんは、少しだけ意地悪い顔をした。

「そ、それ、ずいぶん前のことじゃないですか!?」

「そう。ずいぶん前だね。それから今日までの間、何が美鈴を変えてしまったんだろう?」

< 114 / 239 >

この作品をシェア

pagetop