副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
啓太さんの行きつけのバーや、知り合いが経営しているというレストランなんかにも行って、身近な人達に私といるところを見せて、本来の目的も遂行していった。

啓太さんの知り合いに声をかけられて、直接挨拶をすることもあった。
二人の関係を聞かれると、啓太さんは迷うことなく、〝婚約者だ〟と話した。

心の中では「やめて」と叫んでいるのに、表面上はそれを悟られることないように、笑顔を浮かべていた。

啓太さんと一緒にすごすたびに浮き足立ち、帰宅して一人になると、そんな気持ちを抑え込むかのように、背中を丸めて布団に入る。

さすがにもう、認めざるを得ない。


ー私は、啓太さんを好きになってしまったー


啓太さんの前では、気持ちを悟られないように取り繕う。
他人の前では婚約者として幸せな顔をしてみせる。
それがこんなにも苦しいことだって、思っていなかった。

自分を抑え込むのは、習慣になっているぐらい、慣れていることだと思っていたけど……そんなことに慣れるはずないってわかってしまった。


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