副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「何言ってるの。行くときは、美鈴も一緒にだよ。遠出のデートもいいなあ」

「……私の実家の方にまで、付き合いを広めなくても……」

私の居場所に、これ以上入ってきて欲しくない。
どこにもいられなくなってしまう。

電話の向こうで、啓太さんが一瞬戸惑った気がする。
でも、やっぱりすぐに普段の調子で話し出した。

「そうだな。ただ、こうやって一緒の時間を過ごしていると……情がわいてくる。現地に詳しい美鈴が一緒なら、ますます楽しめそうだ」


一緒の時間をどれだけすごしても、どれだけあまい言葉を囁かれても、啓太さんとの間に生まれるのは〝友情〟のようなものでしかない。
現地に詳しければ、私じゃなくてもいいのだろう。


「いつか……一緒に行くことがあれば、ご案内しますね」

「ありがとう」


< 140 / 239 >

この作品をシェア

pagetop