副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
篠原さんを待たせていることを思い出して、急いで立ち上がった。
ふと顔を上げると、目の前の鏡の中に、立花さんが立っているの見つけた。

「お、お疲れさまです」

振り返って声をかけた。

射るように睨みつけられて、足がすくんでしまう。

「お疲れさまです。
佐山さんは、うちの東山と付き合っているのですか?」

「えっ?あの……」

「どうなんですか?」

「えっと……」

「はっきり返事ができない関係、ということなんですね?
おかしいと思いました。ドレスを見立てたと言ったすぐに、婚約者だなんて言い出したので、最初から疑っていました。
まあ、あなたが婚約者なわけがないって、わかっていましたけどね」

「ど、どういうことですか?」

「私と啓太は付き合っているんです。もちろん、結婚を前提として」

「えっ?」

〝啓太〟っていう、親しげな呼び方が心に刺さる。


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