副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「篠原さん。すみませんが、お手洗いに行ってきます」

「一人になって大丈夫?俺は会場の入り口付近で待っているから。口説かれないようにね」

「大丈夫ですよ。すぐにもどりますね」



パウダールームの椅子に座ると、ホッとした。

慣れることのない、パーティーの雰囲気。
気をつかうドレスやハイヒール。

知らないうちに体がこわばっていたようで、疲労感に襲われた。

誰もいないのをいいことに、大きくため息をつく。

「早く終わりたい……」

無意識のうちに呟いていた。
それだけに、これが本心なんだってわかる。


啓太さんは、私の望んでいたことを引き出して、たくさん叶えてくれた。

映画を観に連れて行ってくれた。
おしゃれを楽しませてくれた。
初めてバーにも連れていってくれた。
大きな腕の中の安心感を教えてくれた。

男の人といて、こんなにドキドキさせられたのは、初めてだ。


あと一つ叶えて欲しいことは……


私を解放して欲しい。



珍しくはっきりした自分の思いに、自然と心が安らかになった。


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