副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
ふとスマートフォンに目を向けた。

昨夜から一切見てなかった。
けど、篠原さんにはかなり心配させてしまってると思う。

篠原さんから、二通メールと一件の電話。
啓太さんから、一通のメールと一件の電話。

私の体調を心配する篠原さんのメールに、少し心が痛む。
とりあえず落ち着いた旨と、何も言わずに急に帰ってしまったことと、すぐに返信できなかったことの謝罪の意をメールした。

啓太さんは、私が疲れて寝てしまったと思ったのか、〝おやすみ〟と送られてきていた。
これには何も返せなかった。



食事もそっちのけで、便箋とペンを手に、机に向かった。

ー退職願ー


母に勧められて必死に勉強して、資格を取って、就職活動も挫けずに頑張った。
こうしてやっと就けた心地良い職場だったけど、なんの迷いもなく、退職願を書けてしまった。
そのことが、少しだけ切なかった。

ここに残り続けて、立花さんの横で、優しい微笑みを浮かべる啓太さんを見ていたくない。
その思いの方が大きかった。


それから、週末は何もしないですごした。
たまになるインターホンにもスマートフォンにも、全て無視を決め込んでいた。

まるで抜け殻になったようだ。


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