副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
そうして電車に揺られて、会場となるホールにやって来た。
母は、受付に花束を預けて、もらったプログラムを眺めていた。

「えっと……加奈ちゃんとこの夕ちゃんは……8番か」


「あっ、江里ちゃん!来てくれたのね」

江里ちゃんとは、母の名前だ。

「加奈ちゃん!久しぶりだね。案内をくれてありがとう」

「ううん。来てくれたなんて嬉しい。夕は今、着替えに行ってるのよ」

「夕ちゃんは、いくつになったんだっけ?」

「もう10歳よ、小学4年生」

「早いわねぇ」

「あっ、美鈴ちゃんね。こんにちは」

「こんにちは」

「美鈴ちゃんも大きくなったわね。今いくつ?」

「4歳」

指で〝4〟を作って元気に答えると、おばさんが驚いていた。

「もう4歳かあ。おばさんが美鈴ちゃんに会ったのは……2歳頃が最後だったかしら?」

「そうね。それぐらい。加奈ちゃんとは昼間に少し会ってたけど、美鈴は幼稚園に行ってる時間だったからね。
あっ、そうだ。受付に花束を預けておいたから、帰りに受け取ってね」

「わざわざありがとうね。夕は8番目だから、聴いてやってね」

「ええ」

「じゃあ、ちょっと様子を見てくるわね」
< 18 / 239 >

この作品をシェア

pagetop