副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
母を招待して少しした頃、連絡がきた。

「美鈴。お母さんね、美鈴の産後のお世話をしにそっちに行ったら、そのまま東京に残ることにした。静岡には、もうなにも残さないわ」

「いいの?」

「ええ。こっちの物は、全て処分することにした。あの時に会った友達がね、改めて仕事を手伝って欲しいって言ってくれたの。美鈴の手伝いがひと段落したら、友達の会社で働くことにした。
その子もご主人を亡くされててね、マンションが広すぎるから、どうせなら一緒に住むか、どこか手頃なところに隣同士で住んじゃう?なんて話してるの」

母は、これまでに聞いたことがないぐらい、はしゃいだ声をしていた。

「それでね、こっちのことが片付いたら、東京に移ることに決めたわ。
またいろいろ決まったら、連絡するわね」

生き生きした母の声を聞くと、私も嬉しくなる。
早速、帰宅した啓太さんに報告すると、一緒に喜んでくれた。




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