副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「それにしても、篠原さんと舞さんが結婚するなんて、思ってなかったなあ」

そう口にするのは、何度目だろうか。

「でしよ?私も予想外よ」

こうやって舞さんが笑い飛ばすのもお決まりのようになっている。

「そういう美鈴ちゃんと啓太だって、あの時はもうだめかと思ったんだぞ」

篠原さんが言うのは、そう、私が啓太さんの前から姿を消そうとした時のことだ。

「おい、晴土。そのことはもう、思い出させないで」

啓太さんが顔をしかめる。

「まあ、お互いに、いろいろあったってことよね」

舞さんらしい、ザックリとしたまとめ方に、おもわず笑ってしまう。

「舞さん、育児はどうですか?」

「こんなに大変だなんて、思ってなかったわ。毎日が睡眠不足。でもね、晴土も手伝ってくれるから、ずいぶん助かってるわ」

「へえ……なんか、篠原さんのイメージが……」

「こらこら、美鈴ちゃん。俺のことをなんだと思ってるの?
まあ、自分でも、こんなに子煩悩になるとは思わなかったけど」

そう。
今や篠原さんは、社長の山岸さん並の愛妻家で子煩悩なのだ。
会社のデスクには、家族三人の写真が飾られているらしい。

< 236 / 239 >

この作品をシェア

pagetop