副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
自分は、生まれながらに跡継ぎだと決まっていたこと。仕事でやりたいことがたくさんあることなど、東山さん自身のことを聞かせてくれた。


「佐山さん、ずっと気になっていたのですが、どうして羽山音楽スタジオを辞めてしまったのですか?」

「そ、それは……」

「いや。言いにくいことならいいんです。ただ、毎年お見かけしていたので、つい気になって」

「いえ、大した話じゃないんですけど……当時、父が仕事中に突然倒れて、そのまま息を引き取ったんです。当然、ピアノを続ける余裕もなくなって、祖父母の暮らす静岡に引っ越したんです。その祖父母も数年後に亡くなり、それからは母と二人で暮らしていました」

「そうだったんですか。辛いことを聞いてしまい、すみません」

「いえ、大丈夫です」

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