白い便箋を太陽に翳してみれば・・
最後にちゃんと花恵に会っておきたかった。
俺がここを離れる前に、花恵の顔を忘れないように目に焼きつけておきたかった。

久しぶりに花恵と会った時は、すぐにでも抱きしめてあげたかった。
だけど、それをしたら・・もう引き返せなくなりそうで怖かった。

それから俺達は、ある場所に向かった。
電車で何駅か先にある場所・・。

それは、俺の想い出の場所でもある海だった。

なんで花恵をここに連れて来たのかは、自分でもあんまり分からない。
ただ体が勝手にここへ向かっていた。
隣の花恵を見れば、無邪気にはしゃいでいる。
そんな姿が、ただただ愛しかった。

「俺・・海が好きなようで嫌い・・」

気づけば俺は、花恵にそんな言葉を言っていた。
案の定花恵は、驚いた顔をしている。

「何か海で特別な想い出でもあるの?」

そんなことを言った花恵に俺は、「別に何もねーよ」ただ一言だけそう言った。
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