副社長の初めての相手は誰?

「お話しの途中に失礼します」


 海斗は希歩の隣に座った。


「私は、この事務所の社長です」


 海斗は優に名刺を渡した。


「秋田海斗さん…」

「はい、お判りでしょうが。希歩の父親です」

「そうでしたか」

「お届けした書類は、見て頂けましたか? 」

「はい、全て見させて頂きました」


 ほう? と、海斗は優を見た。


「それなら話は早いです」


 海斗は口元でニヤッと笑いを浮かべた。


「宗田春美さん。…彼女には、相手の男性より告訴状が届いております」

「告訴状? 」

「はい。偶然にも、相手の男性の方からも我が事務所にご相談がありましてね。春美さんに、脅されて関係を持たされたとか。その事で、ご家族との関係も大変悪くなったとの事です。それで…男性側の奥様より、慰謝料請求をされております」

「慰謝料ですか? 」

「ええ。子供がいるため、離婚はできないそうです。今回の事は、春美さんより脅迫をされていた事からやむを得なかった事も判明しておりますので」


「そうですか。それで、慰謝料とはどのくらいの金額を要求されているのでしょうか? 」

「奥様からは、3000万の要求がされております」

「3000万? それは、随分と大金ですね? 」

「ご家族の名誉もありますので。ですが、もし不服でしたら。この案件を、裁判にて決着をつける事により。慰謝料の額は減額されると思われます」

「なるほど…」


 フッと小さくため息をついて、優は鞄から小切手を取り出した。


 そしてサッッと金額を書いて、そのまま海斗に渡した。


 ちょっと意外そうな目をして、海斗は優を見た。


「これを受け取って下さい。まだ必要でしたら、仰って頂ければ用意します」


 差し出された小切手を受け取り、海斗は金額を見て驚いた。


 小切手には1憶の金額が書かれていた。


 こんな金額を、何も躊躇わずに差し出すなんて…この人は一体…。


 驚いた目で海斗は優を見た。


「そのお金で。全てを終わらせて下さい。勿論、お金で全てが解決するとは思いません。宗田家の人間である者が、世間で許されない事をしたのなら誠意をもって償いを致します。それは、変わりません」

「なるほど。わかりました、そのお気持ちを相手方にお伝えします。それで、示談が済めばもうこの件に関しては終わります」

「はい。そうして頂けると、助かります」


 海斗は受け取った小切手を手帳に閉まった。


「あの。ここからは、希歩さんのお父様として私と話しをして頂く事はできますでしょうか? 」

 ん? と、海斗は優を見た。


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