夜空に君という名のスピカを探して。
 小説を書き始めて三日目。

今日は気分転換を兼ねて学校帰りに、いつかダイくんとカズくんと来たカフェで執筆をすることにした。

宙くんは寝る間も惜しんで協力してくれたので、小説はすでに物語の中盤まで進んでいる。


「ここは俺が本当に望んでる夢がなんなのか、頭が蒸発しそうなくらい悩んだところだな」


 宙くんは【この人は私と同じ、夢を諦めきれなくて足掻いている。不確かで不透明なこの世界で必死に、確かなものを探しているんだ。】という小説の文字を、パソコンの画面の上から人差し指でなぞっていた。


『そうだね。ここは私が宙くんに夢を捨てないでほしくて必死になってたところだ』


 そう、このシーンは宙くんがあの公園で本当の夢を教えてくれたときのことが書かれている。

私たちにとって、とても大事な場面だ。


「スピカの話もそうだけど、俺の話……いろいろ覚えててくれたんだな」

『うん、宙くんの話って、いつも私の知らない世界を知れるから心に残るの』

「おっ……お前、よくもそんな恥ずかしいセリフが言えるな」

『照れるなって』

「なんで、お前だけ余裕なんだよ」


 逆になんで、宙くんに余裕がないのかを教えてほしい。

君は私のことなんて、幽霊の友達くらいにしか思っていないでしょうに。

 どこか気を紛らわすようにコーヒーをひと口だけ飲んだ宙くんに、私は首を傾げる。


「まぁともかく、俺たちって似てるよな」

『あー、誕生日も一緒だしね! 乙女座同盟でも組む?』

「頭悪そうな同盟だな、俺は遠慮しとく」

『遠慮しなくていいのに』

「……話が進まないから、黙って聞け。俺が言いたいのはそこじゃなくて、将来に悩んでたところが似てるってことだ」


 それは、確かにそうかもしれない。

性格はこんなにも正反対なのに、夢を誰にも認められなくて、それでも諦めきれなくて、必死に足掻いていたところは同じだった。


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