夜空に君という名のスピカを探して。
「頼むから、喚くな」


 加賀見くんは額を押えて俯く。

するとなんと、佐久間くんが椅子をズルズルと引きずってきて加賀見くんの隣へとやってきた。


「委員長、頭痛いの?」

 整った眉をハの字に下げて、佐久間くんは心配そうに顔をのぞき込んでくる。

「あぁ、大丈……」

『なんて優しい人なの! 生きてたら絶対に和彦くんに告白するのに!』

「うるさ──ゴホンッ、すまない頭痛が……」


 長年色恋とは縁がなく、彼氏がいたことはない。
高校こそはと思っていたけれど、早二年と数週間。

ついに高校三年生になってしまっていた。

加賀見くんの額に青筋が浮かぶのも構わず、謳歌できなかった甘酸っぱい青春に騒いでいると──。


「なんだよ、頭痛持ちか? 加賀見って頭いっぱい使ってそうだしな」

 ひとりで納得している風間くんに、加賀見くんはなんとも言えないような複雑な表情で笑みを繕ったのだった。



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