夜空に君という名のスピカを探して。
「加賀見、飯食おうぜ」

 それは昼休みに起きた奇跡だった。

いつもならさっさと屋上へ行って昼ご飯を食べる加賀見くんに、風間くんが声をかけてきたのだ。


「え……?」


 加賀見くんは立ち上がって椅子の背もたれに手を置いた状態のまま、完全に固まっている。

突然のお誘いに思考が停止している加賀見に『しっかりして!』と活を入れる。


『せっかくの友達のお誘いなんだから、座って座って!』

「あ、あぁ……」


 動揺しながら加賀見くんは、私に言われるがままに席につく。

すると、おもむろに立ち上がった風間くんが加賀見くんの机を反対にした。


「なにをしてるんだ」


 目を丸くする加賀見くんに、なんでそんなことを聞くんだとばかりに風間くんは目を丸くする。


「なにって、席をくっつけたほうが話しやすいだろ?」

「じゃあ俺はここに」
 

 佐久間くんも自分の机をズルズルと押して、向かい合って座る加賀見くんと風間くんの机の横につけた。

そしてコンビニ袋を漁るふたりの前で、加賀見くんだけが弁当箱をパカッと空ける。

それに気づいた風間くんは焼きそばパンの袋を開ける手を止めて、加賀見くんのお弁当箱をのぞき込んだ。


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