夜空に君という名のスピカを探して。
「加賀見、次は俺とデュエットな」

「風間、それは……いきなりハードルが高すぎる」

「ハードルは乗り越えるためにある」


 加賀見くんの肩に腕を回して、風間くんはマイクを片手に叫ぶ。

加賀見くんは助けを求めるように佐久間くんを見た。


「ははっ、ダイは委員長が気に入ったんだね」

「笑ってないで助けてくれ、佐久間」

「ごめんごめん、つい面白くて。ほらダイ、委員長が困ってるよ」


 ふざけ合いながらカラオケをする加賀見くんたちを見ていたら、やっぱり友達っていいなぁと思う。

私がそう感じるということは、加賀見くんも同じ気持ちなのだろうか。

 なんでもないようなことも、彼らといるとバカみたいに笑えたりする。

私にとっては彩や由美子がそうだった。

加賀見くんを通して色んな感情に触れるたびに、彼女たちと過ごした時間、会話のひとつひとつが大切な宝物だったことに気づかされた。



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