夜空に君という名のスピカを探して。
「っ……あぁ、そうだな。風間、佐久間、俺のことは宙って呼んでくれ」


 噛みしめるように言った加賀見――宙くんに、鼻がツンとするのを感じた。

嬉しくて泣きそうなのだと伝わってきて、凪いでいた彼の心がこんなにも騒がしく動くことに喜びを覚える。


「なら、俺のことは“ダイ”な」

「俺はカズ、だね」

 なんの変哲もない日々に差し込む光、宙くんの世界は少しだけ明るくなったような気がする。

「ダイ、カズ……よろしく」

「「宙、よろしく」」

「──っ、あぁ、よろしく」


 名前を呼ばれた瞬間、目元が熱くなる。

それを堪えて、ゆっくりと唇が弧を描いた。

笑顔を交わす三人を橙色の夕日が包み込むように照らしている。

それはまるで孤独しか知らなかった彼が、人の温かさに触れたときの喜びの心を表しているように見えた。


「それじゃあ電車来るから、そろそろ行くな」

「ふたりとも、また明日!」


 軽く手を挙げたふたりに、加賀見くんは「また明日」と返す。

それから改札を通る風間くんと反対側に歩いていく佐久間くんの背を名残惜しむように見送って、宙くんも自分の帰る場所へと歩き出した。

 家のそばまでやってくる頃には、星が瞬くのを際立たせる夜空が広がっていた。

いつもの住宅街を歩く加賀見くんが「なぁ」と、珍しく私に声をかけてくる。


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