夜空に君という名のスピカを探して。
「うん、じゃあ決めた具体案は委員会ノートに残しておくね」

 そう言って委員会ノートを開くと、前田さんは記入者の所に前田園栄(そのえ)と書いた。


『へぇ、前田さんって園栄って言うんだ。珍しい名前』

「楓、静かにしてろ」


 つい声を出してしまった私を、前田さんといることを忘れてつい窘める宙くん。

当然の反応だけれど、前田さんは顔を上げて「なにか言った?」と目をパチクリさせる。


「い、いや、なにもない。本題に戻ろう」


 何事もなかったかのように話を進める宙くんは、この数日で私に返事をすることが当たり前になっていた。

最初はほとんど無視されていたので、嬉しいことだ。


「うーん、居眠りって結局本人の問題だから、どうしたらなくなるかな……」


 困り果てる前田さんに、宙くんは思考を巡らせているのか天井を見つめた。

居眠りをやめさせる方法について真剣に悩んでいるふたりに申し訳なくは思うが、私は手持ち無沙汰で退屈だった。


「そうだな、隣の席の生徒とお互いに起こし合うっていうのはどうだ?」

「加賀見くん、それすごくいいと思う。あとは空気の入れ替えもしたらどうかな」

「環境から変えるってことか、前田さんの案もすごくいい」


 和やかな空気がふたりの間に流れる。

 そりゃあ宙くんの好きな人なのだから、つっけんどんなわけがない。

それは分かっているけれど、やはり私との対応の差が激しくはないだろうか。

これでも宙くんとは仲よくなれていると思っていたのに、前田さんには当然だが敵わないらしい。

 堅物の宙くんも、ちゃんと男の子だったんだ。

話し合いを続けるふたりを見守りながら、私は『あっ』とまた閃く。

 友達百人は達成してないけど、今はダイくんとカズくんがいる。

なので今度は、恋のお手伝いでもしてあげようじゃないか。


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