夜空に君という名のスピカを探して。
「じゃあ、そういうことで。前田さん、今日はお開きにしよう」

「うん、なんとかまとまったね。お疲れ様でした」


 話に区切りがついたのか、ほっとしたように、ふたりの肩から力が抜けるのが分かった。

それを見計らって、私は『前田さんと仲よくなるチャンスだよ』と宙くんに声をかける。


「なっ、なにを言ってるんだ!」


 それを聞いた宙くんは明らかに動揺して、椅子がうしろに傾くほど仰け反った。

彼の突拍子もない言動に「ど、どうしたの?」と、前田さんが驚きの声を上げる。

 他の人と話しているときは喜怒哀楽に乏しいわ、抑揚もないわで反応が薄いのに……。

毎度毎度、どうして私に対してだけオーバーリアクションになってしまうのだろう、この男は。


「あ、悪い。なんでもないんだ」


 そう言い訳をしたものの、前田さんは腑に落ちないといった顔をしている。

私が憑りついて早四日が経っているのに、彼はまだ幽霊との同居生活に慣れないらしい。


『宙くん、私が声をかけていちいち驚くの、もうやめてよね』

「驚いたんじゃない、動揺したんだ」

『はい? なにが違うの?』

「その……仲よくなるっていうのにだな……」


 小声でもごもごと答える宙くんに『あぁ、そっちか』と納得する。

宙くんは見かけによらず、ウブなんだな。

なんて、たいして経験豊富なわけでもない私に言われるのだから、宙くんは相当な恋愛下手ということを自覚したほうがいいと思う。


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