夜空に君という名のスピカを探して。
『とりあえず、好きな女の子を前になにもしないなんて男じゃないからね』

「余計なお世話だ」

『文句はあとで聞くから、なにか話しかけてよ!』


 私の叱咤に宙くんは渋々、「あの、前田さん」と声をかけた。彼の緊張が私にまで伝わってきて、心臓がバクバクとうるさい。

なにを言うつもりなのかと、ハラハラしながら見守っていると──。


「ご趣味は……」

『この、おバカ!』


 なにを言い出すかと思えば、お見合いの決まり文句みたいな質問をするやつがあるか。

当然と言えば当然だが、あえて言うならば目の前の前田さんは探るような目で、こちらを見ている。

 当たり前だ。

彼女はきっと、宙くんのなんの脈絡もない発言に混乱している最中だろう。

彼の意図不明な発言に思考回路はショート寸前のはずだ。

 この今すぐにでも逃げ出したい沈黙をどう乗り切ればいいのかと考えていたとき、前田さんがぷっと吹き出した。


「ふふっ、加賀見くんって面白いんだね」


 返ってきた返事は予想の遥か斜め上をいっていて、私たちはほぼ同時に「え?」と目を点にする。

クスクスと口元を手でおさえて肩を揺らす前田さんは、いかにも女の子という感じで可愛らしい。


「そんなに、おかしいか?」


 宙くんが照れくさそうに目線を彷徨わせて尋ねると、前田さんは目を細めて優しい眼差しを向けてくる。

 ──あ。鼓動が走ったあとみたいに、ドクドクと激しくなる。

それは宙くんが前田さんを好きな証だった。


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