夜空に君という名のスピカを探して。
「だって加賀見くん、急に趣味なんて聞くんだもの」

「わ、悪い……」

「ううん、悪くなんてないよ。そうだな、私は読書が好きだよ」

「へぇ、なにを読むんだ?」

「えーと……“荒野を走る”とかかな」

「あぁ、俺も読んだ。そうか、前田さんも気難しいのが好きな質か」

「ふふっ、私もってことは、加賀見くんもなんだね」

 顔を見合わせて笑うふたりの間には、柔らかな空気が流れている。

「なら、“白亜の塔”も面白い。人間の心情を事細かに描写していて、引き込まれる」

「へぇ、いいこと聞いちゃったな。他にオススメはある?」


 私も読書は好きなのだが、ふたりの会話に出てくる難しそうな本は読んだことがない。

完全に蚊帳の外状態の私を置き去りにして、宙くんたちは共通の話題を見つけて盛り上がり始めた。

宙くんも勉強が恋人みたいな人なので、本の虫である前田さんとお似合いなのかもしれない。

 これでふたりがうまくいけば……と、そこまで考えてチクリと胸が痛むのを感じた。

私は自分の胸に感じる違和感に首を傾げる。

 楽しそうに話しているところを見ると、宙くんのものではなさそうだ。

それなら、このモヤモヤした気持ちは私のものということだろうか。

それがどういった意味を持つのか、今の私には分からなかった。

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