夜空に君という名のスピカを探して。
「楓……なんか心臓が痛いんだけど、これはお前のか?」

『えっ……ううん、気のせいじゃない?』

「気のせいなわけあるか」

『…………』


 宙くんに私の胸の痛みが伝わってしまったらしい。

私にもどうしてこんな気持ちになるのかが、分からない。

ただ、彼には知られたくない。そう思った私は、しらばっくれる。


『ほらほら、細かいこと気にしてないで帰ろうよ。神経質は剥げるの早いよ』

「余計なお世話だ」

『早く帰って、宙くんママの美味しい手料理が食べたいな~』

「現金なやつだな」

『今日はなにかな~、やっぱり松坂牛のサーロインステーキかな。もちろんレアで』

「うちは高級レストランじゃないんだぞ」

『肉食系女子なんで、肉だけに』

「会話の半分以上が支離滅裂だぞ、お前」


 本心を偽って、さも晩ご飯のことしか頭にないように振る舞う。

宙くんは騙されてくれたようで、見事に呆れていた。

 いつもと同じように軽口を言い合いながら、私たちは学校の外へと出る。

家のそばにある住宅街までやってくる頃には、空はすっかり真っ暗になっていた。

 いつもと変わらないところといえば、会話がなかったことだろうか。

それは故意ではなく、私だってぼんやりとしてしまうこともあるわけで、つまり白状すると宙くんと前田さんが仲よくしている姿にモヤモヤしている。

もちろん嫉妬なのだろうけれど、種類は恋じゃなくて友人を取られてしまう寂しさ……だと信じたい。

 ああでもない、こうでもないと脳内会議をしていたら、宙くんが急に立ち止まった。


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