悔しいけど好き
まさかの急展開に付いて行けない。
だって昨日好きだと気づいて今日付き合うことになったのに結婚なんて…
難しい顔で考え込んでいるとポンと頭の上に手を置かれにかっと笑う鷹臣に気を取られる。

「まあそう、考え込むなよ。自然と結婚したくなるから」

「なに、その自信」

さっきまで自信なさげな顔してたくせに。

「ま、お兄さんの許しも出たことだし?もう挨拶の予約もしたし、外堀は埋まってるからな。俺が本気出せばお前は逃げられないってわけだ」

「な…!」

悪魔的な笑顔を私に向けて勝ち誇ってるこいつ。
私はやっぱり逃げた方がいいのかしら?
でも、きっと追いかけられ絡め取られて奴の思うがままにされてしまう気がする。

もう寝ようぜと手を差し伸べられてついその手を取っちゃう辺りもう逃げられない気はする。

私の部屋は既に物置にされており、客間に行くと二つ並んだ布団に頭痛がする。
何故か目を輝かせる鷹臣に今日は絶対何にもしないでよ!と釘を刺して布団に入る。
ちょっと不満げな鷹臣の横顔を見てそっと手を繋ぐ。
ふとこっちを見た視線を避けるように目を瞑った。

「手だけだから。それ以上は無理!おやすみ!」

「…おやすみ、凪」

きゅっと握り返された手が温かくて自然と眠気に誘われる。
ごそごそと鷹臣が動く気配がしたけどもう夢現で、鼻の頭に何か温かい感触がしてそれが合図のように眠りに落ちていった。
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