悔しいけど好き
農家の朝は早い。
当然お盆休みなんてものはなく、今日も畑仕事のために起き出す家族。
私も起きようと体を動かすとなぜだか動かない。

「ん?……なんで?」

いつの間にか鷹臣は私の布団に入りがっちり腰に腕を回している。
もう…寝てる間に潜り混んで来たらしい。
ため息をついてそっと起き上がる。

「あ…凪…まだ早いだろ?もう少し寝よう…」

目を開けた寝ぼけた鷹臣は起き出した私をぎゅうっと抱きしめてくる
その腕を剥がして何とか這い出ようとする。

「あっ、ちょっと離してよ。鷹臣はまだ寝てていいよ。私畑仕事手伝ってくるから」

「畑…ああ、こんな早くから……」

目を瞑ったままの鷹臣は寝言のように呟いた。

「眠いんでしょ?寝てて」

「ん~ん…」

寝ぼけてるくせに力は強くて肩をぐいっと引き寄せられたと思ったらいきなり濃厚なキスをされた。

「あ…んん…たか…」

押さえようとしてもダメ、微睡んでる鷹臣は十分に私の唇を堪能するとふっと離れた。

「ちょ…っと朝から何?」

「目が覚めた。俺も手伝う」

にかっと笑いスッキリした顔で起き上がる鷹臣に唖然とする。

「もう!」

私は膨れ睨んで奴の耳を引っ張ってやった。

「いでっ!」

ふん!いい気味!
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