婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
私も席を立つ。
その暖かみのある橙色にもっと触れたくて、崖っぷちへと足を進める。
豹牙の隣に並んで、どこまでも続く夕陽に染まった王領を見下ろした。
「夕陽が沈んでいるあの辺りは、海だな」
「海?」
「おー。たぶん竜王領だ。夕陽に染まる海もきっと綺麗だぞ?」
「そうなの!」
目から鱗だ。
私がつい前までいた竜王領も、今頃はこんなに美しい橙色に染まってるなんて。
見てみたかった。
「…ずっと竜王領にいたのにな。気付かなかった」
過ぎた日を悔やむかのように、一言漏らす。
私が陰口叩かれて辛いとか、竜王様が側妃のところに通っていて悲しいとか。
そんな事を思っている間に、この美しい景色を見逃していたのかの思うと、私はそこでいったい何をやっていたんだろうかと思う。
こんなの見たら、そんな真っ黒い感情も吹き飛んでいたはずだ。
「そりゃ、気付かねえもんじゃね?」
「え?」
見上げた私に、目が合った豹牙はフフッと笑う。