恋するオオカミ〜不器用だけと一途なんだよ!
迫田の声だ。
杏の足音が止まる。

「そんなんで…わたしに勝ったつもり?」

しばらく間があった。
俺は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

杏に何する気だ?

出て行く準備をする…。

「あんたになんて勝つつもりもない。もともと勝負する気なんてないから。」

杏の勝ちだ。

信じられねぇ。
杏がいつのまにか…こんなに強くなってる…

杏が出てきたので俺は手招きして俺の方へ呼んだ。

杏は驚いた表情をしたあと、俺の顔を見て、クシャと顔を歪めると、俺の方へ駆け寄ってきた。

そして下を向いたまま、俺の前で立ち止まる。

俺は、抱きしめてしまおうかどうかと迷っていたんだけど…

けど…もう何もしないって約束したしなとか考えてたら…
迫田たちが何やら言い争い始めてるようだ。

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