最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
「俺を称えろ、オルロフ。命より大切なものを侮辱されても、俺はあの男を殺さずに耐えたぞ。すべては国益のためだ。我ながら偉大な君主だと感心する」

口角を歪ませ異常な形相で語りながら、イヴァンは大声を出して笑った。

その姿にオルロフは、君主に何があったかを悟る。そして狂ったように高笑いをするイヴァンのもとまで行き、恭しく彼のサーベルを差し出した。

「イヴァン皇帝陛下とナタリア皇后陛下は、この国の誇りです。私は陛下がどれほど徳高なお方が存じております。しかし……どうか、おひとりで苦しみを抱え込まないでください。どんなに偉大であろうとも、陛下は人間です。このままではいつか苦悩に命を蝕まれてしまいます……!」

オルロフは涙で声を詰まらせながら訴えた。一番近くで皇帝の苦悩を見続けてきた彼には、イヴァンの苦しさが痛いほどに分かる。

ナタリアと再会し、彼女を支え守り続けて五年。イヴァンの精神はもう限界のはずだ。

希望も見えないまま悪化の一途を辿っている今、彼に必要なのは忍耐でも激励でもない。――救いだ。

「どうか……どうか、陛下御自身をお救いください。そのためならば我々は死力を尽くします。陛下がどのような救いを求めようと、誰も……天にまします主でさえ、あなたをお咎めはしないでしょう」
 
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