最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
「久々だな、戦地に赴くのも。空砲ではない大砲の音が体に響いてくると、血が滾ってくる。ああ、この感覚も久しぶりだ」
司令部の館に向かう道中、イヴァンは馬上から遠目に見える大砲の煙を眺め、微かに目を細めた。
「陛下が最後に戦場にお出になったのはもう三年以上前、シテビアの自治権を巡ってフェイリンの軍を制圧したときでしたね。あのときは馬に伝染病が流行って大変だったのを思い出します」
イヴァンと馬を並べて歩いていた侍従武官長のルカがそう笑いかけると、イヴァンもおかしそうにクツクツと笑った。
「そんなこともあったな。あのときは近隣の農村から馬をかき集めてなんとか頭数を揃えたっけ。エゴール将軍が『農馬になんか跨れるか』と鼻息を荒くしていた姿は今思い出しても傑作だ」
ハハハと笑い声をあげるイヴァンを、ルカは密かに安堵の眼差しで見つめる。
そして司令部となっている館に着き馬を降りると、イヴァンは意気揚々とした足取りで隣接している兵士の宿舎を見て回った。