最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
「陛下! 来てくださったのですね、なんと心強い!」

「おお、陛下! お待ちいたしておりました!」

兵士たちは皆、イヴァンの姿を見て歓喜した。戦線で暮らしている兵士たちの軍服はくたびれていて、最敬礼とはいえ宮廷に比べるとずいぶんくだけた挨拶だったが、イヴァンにはそれが妙に心地よかった。

「陛下。今宵のお食事は軍務会議に合わせて夜七時からとなります。テルキット帝国の海軍が侵攻しているせいで漁業が停止し、あまりよい食材がご用意できないのですが……」

兵士たちの様子を見て回っていると、司令部担当の料理長がそう報告にやって来た。

申し訳なさそうな顔をする料理長に、イヴァンは「ふむ」と考えるそぶりを見せてから悪戯っぽく尋ねた。

「シーアスパラガスはあるのか?」

シーアスパラガスは海岸に自生する海藻だ。テルキット帝国ではよく食べられているようだが、スニーク帝国ではあまり馴染みがない。ここのように沿岸部隊の食事には出ることはあるが、スニークの兵士たちの間ではあまり好まれていない食材だった。

「はい、ございます。シーアスパラガスはあちこちに生えておりますから、テルキットのやつらがちょっとやそっと大砲を打ってきたくらいでは焼き払えません」

料理長の答えを聞いて、近くにいた兵士たちがウンザリとした顔をする。それを見てイヴァンは愉快そうに笑うと、「そいつは豪気だ。敵の大砲に耐えうるためにも山盛りにして食そう」と兵士たちをからかうように言い、周囲は和やかな笑い声に包まれた。
 
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