最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
軍隊の規律は厳しいものだが、宮廷の儀礼やしきたりとは質が違う。
生死を共にする仲間とは独特の絆が生まれ、ときに勇気や才能が身分を超えて称えられることもある。
形式や虚飾など介入せず人間の本質が現れる戦場での生活が、イヴァンは嫌いではなかった。
イヴァンは兵士たちの様子をひと通り見回った後、晩餐を兼ねた軍務会議でテルキット海軍迎撃の作戦を話し合った。
ナタリアが輿入れしてくる前までは、イヴァンもたびたび戦地に赴いては指揮を執っていたのだ。テーブルの上に地図を広げ将官らと部隊をどう動かすか練っているうちに、イヴァンは心地よい高揚に満たされていく。
戦場では戦いのことだけ考えていればいい。敵をどう倒し、仲間をどう生かすかだけがすべてだ。
久々の軍務会議を終えたイヴァンはその夜、途中で一度も目覚めることなく朝まで眠った。――数年ぶりのことだった。