最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
帝都に帰る前の晩、皇帝歓迎と兵士たちの慰労を兼ねた宴が賑やかに和やかに開かれた。
司令部よりニ十キロほど離れた農村地帯にあるアルスキー辺境伯の館は大きく、公園と繋がっている庭は三百人ほどの客人を容易くもてなせる広さがある。
兵卒たちはガーデンパーティーで歌を歌い酒を酌み交わして大いに英気を養い、将官たちは館で晩餐会の後、ホールでの仮面舞踏会を楽しんだ。
イヴァンは晩餐会こそ楽しんだが、舞踏会では少々居心地の悪さを感じていた。
仮面舞踏会とはいえ、高身長で美しい白銀の髪を持つイヴァンは仮面をつけたところで正体がバレバレだ。それにくわえ無礼講でナタリアがいないという今夜は、彼に憧れる女性にとって絶好のチャンスである。
イヴァンは会場に入ったときからひっきりなしに女性からのダンスの誘いを受け、断り続けていた。例え仮面舞踏会であっても、彼に下心のある女性と踊る気はない。
ホストであるアルスキー辺境伯の夫人と礼代わりに踊ったきり、あとは将官らとゆっくり会話でも楽しむつもりだった。しかし女性たちはイヴァンを放っておいてはくれない。
ダンスに誘い、飲み物を勧め、会話に首を突っ込んでくる女性たちに辟易として、イヴァンはついに「風にあたってくる」と言って会場から抜け出してしまった。