最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
館の庭では、ほどよく酔っぱらった兵士たちの笑い声や歌が響いていた。
あちこちに置かれたトーチの炎が兵士たちの顔を赤く照らし、その表情をいっそう陽気に見せる。
庭に出てきたイヴァンの姿を見つけ、すぐに幾人かの兵長が駆けつけてきた。
「陛下! おひとりでいらしたのですか? さあ、どうぞこちらに」
彼らは庶民ではなく貴族の次男や三男だ。兵卒の中には、軍での地位は高くなくても家柄は悪くない者も多数いる。
そういった者はさすがに気が利くらしく、すぐにイヴァンを椅子に案内しワインを注いだグラスを差し出した。
「ああ、気を遣うな。舞踏会がつまらなくて逃げてきたんだ。俺もこっちの宴に混ぜてもらおうと思ってな」
イヴァンはワインは受け取ったものの、椅子には座らずブラブラと庭を見て回る。気さくな態度の皇帝に、兵長らも顔を綻ばせ「皆喜びます」と言って後をついてきた。
庭には女性の姿もちらほら見えた。この地での軍務に長く就いている兵士の中には、家族を近隣の街へ呼び寄せている者もいる。そういった者の妻や、気を利かせたアルスキー辺境伯が手配した女中たちだろう。イヴァンと同じく舞踏会が肌に合わなかったのか、館から抜け出してきたらしい舞踏ドレス姿の女性もいた。
酒のせいで少々はしゃぎ過ぎている者もいるが、皆いい顔をしている。
イヴァンもその雰囲気に呑まれ、すっかりリラックスしていたときだった。