最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
愛する夫のそばにいて彼の力となり、共に幸せになることを願うのはそんなに罪なことだろうか。
ナタリアはイヴァンが心から安らいでいる姿を知らない。ナタリアを前にして愛おしさに溢れた眼差しを向けることはあっても、その瞳にはどこか悲しみと緊張感が漂っている。
自分が彼を常に不安にさせているのだと思うと罪悪感に押しつぶされそうになる反面、身勝手な恐怖も抱いた。
――いつか彼はわずらわしい妻の隣にいることに疲れきって、背を向けてしまうのではないか、と。
普通の人間ならばそうなったとしても不思議ではない。イヴァンはただ、強靭な精神力でこの状況に耐え続けてくれているだけなのだ。
けれど彼とて人間であることに変わりはない。いつ限界を迎えナタリアに尽くすことをやめてしまっても不思議はなかった。
スニーク帝国に輿入れをしてから一年以上が経つ。歳月は何も解決してくれず、ナタリアの病状もイヴァンの苦悩も悪化する一方だ。そして状況が悪化すればするほど、ナタリアの不安も大きくなる。
――明日にはもう、イヴァン様は私の顔を見てくださらないかもしれない。
気がつくとナタリアの頭の隅には、そんな恐怖がこびりついて消せなくなっていた。