最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
 
――十一月。
帝都の景色がすっかり白一色に染まった頃、イヴァンは王宮へ帰還した。

人々は皇帝が無事に戻ってきたことを喜び、宮廷には以前と変わらぬ日常が戻ってきたように思われた。――しかし。

降り積もった雪が予期せぬ雪崩を起こすように、あたりまえに在った日々は突然崩壊する。それはあたかも、呪いのごとく。


国境への遠征中、皇帝の寝室にはスヴィーニン夫人が毎晩通っていたという噂が社交界に流れ出したのは、社交シーズンが盛りの十二月初めの頃だった。

オルロフの計画の協力者はもちろん他言などしていない。けれど、計画のことを知らない兵卒が宴にいたジーナのことを語り、それを耳にした悪意ある者が皇帝との関係を勘繰ったのだ。

「わしが申し上げた通りだ! この結婚は失敗だった、陛下は雪姫に愛想をつかし他の女に憩いを求めたのだ。ああ、だからあれほどわしはこの結婚に反対したのに!」

あちこちの舞踏会やサロンでそう喚くのはユージンだった。

以前、晩餐会の席で大恥をかかされた彼は、結局自分が正しかったのだと証明しようと大げさに騒ぎ立てた。

今までイヴァンが恐ろしくて口を噤まざるを得なかった結婚反対派も、ここぞとばかりに噂に便乗する。
 
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