最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
「イヴァン様ったら。アレクセイよりお出掛けを楽しみにしてらっしゃるみたい」
肩を揺らしながらイヴァンの隣に腰を下ろせば、すぐさま肩を抱き寄せられてしまった。
「当然だ。お前とアレクセイがそばにいることが、俺にとってどれほど幸福だと思う? 毎日祝福の鐘を鳴らしたいくらいだ」
今まで心を安らげることもできない苦しい日々を送ってきた反動だろうか。イヴァンの妻と子に対するのろけは留まることをしらない。
それは彼が安心し満たされている証なのでナタリアは嬉しくも思うが……人目をはばからずに寵愛されるのは、少し困ってしまう。
抱き寄せ、頬に遠慮なく唇を押しつけてくるイヴァンに、ナタリアは頬を赤くして眉尻を下げる。
「イヴァン様……! お気持ちは分かりましたから、その……人前で口づけは……」
グイグイと胸板を押しやろうとするも、たくましい彼の体はビクともしない。
「夫が最愛の妻に口づけて何が問題だ? 皇帝夫妻が仲睦まじければ子孫が反映し国家の安泰に繋がる。素晴らしいことだろう?」
ナタリアをしっかり腕の中に捕まえながらイヴァンが仕立て屋たちに視線を送ると、彼らは戸惑いつつも「おっしゃる通りで!」と声を揃えた。