最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
「まったく、嘆かわしい! 大帝国の皇帝ともあろうお方が毎日毎日皇后を寵愛されて! いくら皇后陛下がお美しく魅力的だからといっても、君主たるものもっと慎みを持っていただかなければ!」
未だにイヴァンに対して非難ばかりするユージンだが、その台詞が批判になっていないことにオルロフはククッと噴き出す。
「よいではないですか、ユージン殿。イヴァン様もナタリア様も大陸一素晴らしいご夫婦なのですから。おふたりの血を引く御子が多くお生まれになるのは、スニーク帝国として喜び以外のなにものでもありません。それに我が国は今、陛下の長年の御尽力の賜物で国内外とも実に安定しております。陛下にはぜひ恒久の平和のためにも英気を養っていただきましょう」
オルロフの言葉に、ユージンは何か反論したそうな顔をしつつも口を噤んで「ふん」と背を向ける。他の大臣らはそんなやりとりを見て可笑しそうに目を細めながら、「いやはや、その通り。皇帝陛下は長年辛抱されたのです。人目をはばからず皇后陛下と睦み合うなど、むしろ喜ばしいことじゃありませんか」と朗らかに笑う。
和やかな笑い声は、この国が平和である証だ。
鉛色の空と冷たい雪に閉ざされても、スニーク帝国の民の心は温かい。それは民草から、皇帝まで。