最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
(ああ、緊張するわ。どうしましょう)
舞踏会の後、湯浴みを終えたナタリアは皇后のドレッシングルームで侍女と女官に手伝われ、夜の身支度をしていた。
綺麗に髪を梳かれ、肌にはオイルを塗られ、手足の爪まで綺麗に磨かれる。
無理を言って踊った足は少し痛んだが、薬を塗って包帯を巻かれたらほとんど痛みは感じなくなった。
最後にラベンダーの香水を仄かに纏わせて、侍女長が「さあ。お支度が整いましたよ」と声をかける。
ガーネットと月桂樹の彫刻が施された金縁の姿見に映っているのは、美しく磨かれた体を絹の寝間着に包んだ自分の姿だ。
胸もとにリボンのついた絹の寝間着は生地が薄く、光にさらすと体の線が出てしまって恥ずかしい。
(こんな格好でイヴァン様の前に出るなんて……)
今夜は初めてイヴァンと床を共にする夜だ。覚悟はしていたつもりだけれど、やはりいざとなると羞恥と緊張で鼓動が速まるのを抑えられない。
おまけに扇情的な寝間着を着せられてしまい、ナタリアは鏡に映る自分を直視できず、赤くなった頬を両手で押さえて目を逸らした。