最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
他国では跡継ぎの男子をなかなか産めない皇妃や王妃が、側近や臣下からひどい嫌がらせを受けることもあるという。

それに比べ自分の側近らはこんなにも優しく励ましてくれる。彼女たちはチェニ城にいた頃から仕えてくれている気心知れた仲だけれど、皇后になっても変わらず力になってくれることが嬉しい。

「ありがとう。気持ちが落ち着いたわ」

ナタリアが微笑んで礼を言うと、侍女長は一礼してから「では参りましょう」とドレッシングルームのドアを開けた。

頷いてナタリアは侍女長の後を歩き、夫婦の寝室へ向かう。

本宮殿の三階にある皇帝夫妻の寝室は、ハスクの柄が彫り込まれた大きな両開きのドアが備えられている。

寝室へ入ったナタリアは就寝の挨拶をして去っていく侍女長らをベッドに腰掛けて見送り、イヴァンを待った。

豪奢な屋根とカーテンのついた夫婦用のベッドは大きく、大人が五、六人は並んで眠れそうな広さだ。

一度は腰を下ろしたもののどうにも落ち着かず、ナタリアはベッドから立ち上がって部屋をウロウロと歩き回った。
 
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