最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
「……雪……」
窓辺に立ったナタリアは厚いカーテンをめくり、外の景色に目を止める。
昼間は曇天ながら一時的にやんでいた雪が、夜になって再び降りだしたようだ。
暗闇からふいに現れたように舞い落ちてくる雪は、宮殿の窓の近くで一瞬だけ灯りに照らされ、再び闇に吸い込まれるように地面に落ちていく。
雪の積もった地面に新たな雪がさらに降り積もるその光景は、なんだか永遠に終わらない繰り返しを見ているようだ。
もう見慣れた景色だというのに、ナタリアはどことなく心がざわつく。
そのとき、ノックの音が響き部屋のドアが開かれた。
「イヴァン様……」
入ってきたのはイヴァンひとりだ。彼もシャツとトラウザーズの上にガウンという就寝の格好をしている。
窓辺に立っていたナタリアはカーテンを閉め身を翻すと、イヴァンの前まで進み出て軽く膝を曲げた。
「い、至らないところもあるかとは存じますが、妻として精いっぱい務めさせていただきます」