最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
閨での作法は学んだものの、裸になって愛し合い子種を受け入れるとはどんなことなのか、ナタリアは漠然としか知らない。

さっきまで少し落ち着いていた心臓がまた加速を始め、緊張と不安で全身がこわばる。

するとイヴァンがフッと小さく笑い、大きな手で両頬を包んできた。

「硬くならなくていい。怖いことなど何もしない。お前はただ、俺に愛されるがままでいればいいんだ」

彼の言葉は侍女長が言っていたことと同じだった。ただ愛を育めばいいと。

少し心がほぐれた気がして、ナタリアは微かに微笑む。

それを見てイヴァンも目を細めると、そっと唇を重ねた。優しい口づけからは彼がナタリアを愛おしく思う気持ちが伝わってくる。

「愛してる。ナタリア、世界一愛しい俺の妻。お前の心も体もすべて俺のものだ」

唇を唇で甘く食み、ねぶり、軽く吸い上げる合間にイヴァンが情熱的に囁く。それだけでナタリアは体の芯が熱くなり溶けてしまいそうだった。

「イヴァン様……私も、私もあなたを……愛しています」

名を呼び合い、唇が触れ合うたびに、緊張は解けていった。その代わりに込み上がってくるのは切ないほどの彼への恋情と多幸感だ。 
 
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