最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
ナタリアから顔を離したとき、イヴァンの息が微かに乱れていた。
彼は少しだけ照れくさそうに笑い、いったんナタリアから離れた。そして部屋を照らしていた蝋燭とランプの灯りを消していく。
部屋は暖炉の灯りとベッドサイドの燭台の灯りだけになり、途端に雰囲気が変わった。薄闇の室内は、まるで世界にふたりきりになったような親密な空間に感じる。
暖炉の火を反射して金色にゆらめくナタリアの髪を、イヴァンは長い指でゆるく梳いて囁いた。
「ベッドへ」
無言のまま頷いて、ナタリアは彼に肩を抱かれてベッドまで歩いた。
窓がカタカタと音をたてている。外は風が出てきたらしい。
ナタリアがベッドに腰掛けると同時に、イヴァンが覆いかぶさるように唇を重ねてくる。そのまま仰向けに横たわり、自然と体が重なり合う形になった。
彼の厚い胸板の下で、自分の胸が鼓動を速めているのがわかる。大きく高鳴っている心音は、重なる肌を通してきっと彼にも伝わってしまっているだろう。
けれどこれは不安や緊張のせいではない。これから愛する夫に抱かれる歓喜の高鳴りだ。
鼓動と共にこの想いが伝わればいいと、ナタリアは思う。
「イヴァン様……」
彼の名を紡ぐと、目の前の青い瞳に色濃く情熱が灯った。