同期が今日から旦那様!?〜そこに愛は必要ですか?〜
熱い。
体が熱い。
寒い。
体の外側が寒い。
熱くて寒い。

うっすらと意識が浮上して、ぼんやりと目を開ける。

・・・どこだろう、ここ。

見たことのない天井がある。

静かな場所。

じっとりと汗ばんでいる体を動かすと、ギギギと油の切れた機械のように動く。
だるい。
はぁ・・・と息をついて、部屋を見回す。
あきらかに私の部屋ではない・・・。
多分、藤堂君の部屋だろう。
彼の香りが微かにする。
痛むし重たい頭でも考えれば、それが答えだとわかる。
会社の社食での事を思い出して、更に頭痛が酷くなった気がする。

「あ、気が付きました?」

静かに扉が開いて、ラフな格好に着替えた藤堂君がミネラルウォーターを手に部屋に入って来た。
「熱は下がりましたか?」
そう言ってベッドサイトに腰かけて、私の額に手を当てる。
「まだありますね、これを飲んで早く横になってくださいね」
冷えたミネラルウォーターを渡しながら、そう言う藤堂君はいつもと何か違う。
「いつもと違う・・・」
ぼうーっと見上げる私に、
「ああ、髪、じゃないですか」
言われて気づく。
目が見えている。
目が見えてる!!!
思わず二度見するくらいイケメンなんですけど!?

「藤堂君・・・だよね?いや、藤堂君だよね・・・」

思わず聞いてしまう。
見えているパーツも整っているとは思っていたけど、顔全体で見ると国宝級くらいのイケメンなんですけど!!

「ふだんは顔を隠してますからね」

ははっと笑うその顔も眩しいくらい。

「いつも、出してればいいのに」
切ればいいのにって私はいつも思っていたし。
「面倒だからいいんですよ」
「面倒?」
「色々面倒なんですよ」
・・・!
ああ、そう言う事ね。
モテ過ぎて女の子が寄ってくるのが面倒臭いと。

「私もちゃんと見たの初めてかも」
「そうですか?」

そう言いながら私を布団の中に押し込める。

「ちゃんと寝てください。あれだけ言ったのに、無理をするから朝より体調悪くなってたじゃありませんか。真っ白い顔で座り込んでいるのを見たときは、生きた心地がしなかったくらいですよ」
「ごめん・・・でも大げさだよ。寝不足だっただけだよ」
「40度近くまで熱があったんですよ?今が何時か分かりますか?橘さんが倒れたのは昨日の昼です。あなたは丸一日、寝込んでたんですよ」
嘘・・・丸一日経ってるって・・・。
「今は夜の9時過ぎです。明日も会社には行けませんから、ゆっくり休んで下さい。カバンも着替えも昨日、後輩の女性が帰り際に渡してくれたので預かってます。」
「・・・ごめんなさい。迷惑かけて。もう、大丈夫だから」
立ち上がろうとする私を、大きな手が遮る。


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