同期が今日から旦那様!?〜そこに愛は必要ですか?〜
重たくてだるい体と頭を何とか動かして、やっとお昼休みになる。
早退・・・しようかな。
そう思うくらいには体調は悪い。
だるい。
頭痛い。
体が痛い。

「先輩、食堂行きましょう」
桃菜がお財布を片手に駆け寄ってくる。
そうだ。
藤堂君のことを話すと約束したんだった。
「うん、行こうか」
確実に朝よりも悪くなっている体調にうんざりしながら、食堂に向かった。

食堂とは言っても、カフェのような作りの会社の食堂は社員たちに好評だ。
気持ちよく仕事をしてもいらいたい、その為にはまず、食事からと言う社長の方針でモーニングから食べられるようになっている。時間に不規則な人のために、夜も遅くまで開いているし、軽食からがっつりとした定食まで食べられる。だからか、体調を崩す社員が少なくなったと聞いた。
そうだよね・・・今の私がいい例だよ。
金曜日からほとんど食事を口にしていない。
しかも、眠れないから睡眠もとっていない。

今も桃菜がハンバーグランチを食べているのを横目で見ながら、アイスティーを飲むのが精いっぱい。
全く食べたいって思わない。
「先輩、食べないんですか?」
小柄なのに意外と大食いの桃菜は大きめに切り分けたハンバーグを、美味しそうに頬張る。
「あ、うん。なんか食欲なくて」
「ちゃんと食べないと倒れちゃいますよ?元々細いのに、さらに細くなってどうするんですか」
「別にダイエットしてるわけじゃないわよ。ただ、食欲ないだけ」
「そうなんですか?あの男の人にも言われてたじゃないですか。無理するなって。帰った方がいいんじゃないですか?顔色、良くないですよ」
「そうかな・・・」
「そうですよ。藤堂さんでしたっけ?先輩の彼氏さんじゃないんですか?」
「違うよ」
朝のことを思い出して、少し胸がざわつく。
あんな風に藤堂君が私に触れてきたのは、初めてだった。
「あんなに親しそうにしてて、ですか?恋人の空気でしたよ」
私だってびっくりしたわよ。
まさか、あんな風に触れるなんて思っていなかったもの。
今までは少し話すくらいで、お互いに触れたことなんてなかったんだから。
「体調わるそうだったから、心配してくれたんだよ。同期だから」
「そうですか?先輩は違うかもしれませんけど、藤堂さんは先輩の事好きですよ、きっと」
「は?」
何を言い出すかと思ったら・・・。
怖いこと言わないでよ。
「桃菜、藤堂君は人気あるのよ?桃菜が入社した時ロンドンだったから知らないでしょうけど。結構、女のバトルみたいなのあったんだから」
同期ってだけで、私も話していたのを見た人に嫌味を言われたことがある。
ただ、話しただけで、だ。
「私、三次元は興味ないので分かりませんけど。感は鋭いんですよ。先輩も何か、私に隠してますよね?」
・・・感が鋭いのは本当だわ。
でも、さすがに婚約者に二股されてデキ婚される、なんて情けなくて言えるわけない。
しかも、本命じゃなくて浮気相手の方が自分だったなんて言えない。

あぁ、思い出したら結構キツイなぁ・・・。

おばあちゃんにも隠してるし。
誰にも本当の事を言えないって、苦しい・・・。



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