20年越しのラブレター

 そしてついに、スピーチが始まった。

まず社長である父が挨拶をし、次に俺が呼ばれた。

紬は俺の腕から手を離そうとする。
だから俺は、右手でそれをそっと押さえて、
「行くよ」
と囁いた。

戸惑う紬を連れて、俺はステージに上がる。

当然紬は、慌てて俺の腕から手を外して、後ずさりした。

「ほら、紬もおいで。
 今日は一緒にいてくれる約束だろ?」

俺は強引に紬の手を取ると、そのまま一緒にステージに上がった。

「専務の中谷 尋輝(なかたに ひろき)です。
 いつも当社のために多大なるご厚情を賜り、
 誠にありがとうございます。
 このたび、この場をお借りしまして、
 私事ではございますが、婚約致しました事を
 ご報告させていただきます。
 こちらが、婚約者の裁 紬(たち つむぎ)さん
 です。
 当社共々、若輩者の私たちにも暖かいご指導
 ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げ、
 簡単ではございますが、挨拶と変えさせて
 いただきます。
 本日は、誠にありがとうございます」

俺の隣で茫然自失の紬。

それでも、俺が頭を下げたのを見て、一緒に頭を下げてくれた。

うん。
これで紬は、俺の婚約者。
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