Dangerous boy
「知ってる。だから、途中で止めただろ。」

「うっ……それも、すみませんでした!」

「だから、謝らないでくれよ……」

いつの間にか、部長の目も濡れている。


その時、タイミングがいいのか悪いのか、パスタが運ばれてきた。


「おお、美味しそうだな。」

部長は私に、フォークを取ってくれた。

「ほらっ!」

私は小声で、”有難うございます”と言うと、フォークを受け取った。

「俺の事は気にするな。また上司と部下に、戻るだけだから。」

「はい。」

「言ってる側から泣く。」

「すみません。」

部長の優しさが心に染みる。


「今だけは、笑ってくれるか?」

私は大きく頷いた。

「はははっ。おまえのお陰で、念願のこの店にも、来れたしな。」

そう言って、部長は笑ってくれた。

「他に行きたいお店があるなら、お供しますよ。」

「おっ、言ったな。」

「はい。あっ、あくまで部下として。」

そして私も、ようやく微笑み返す事ができた。
< 51 / 171 >

この作品をシェア

pagetop